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経営財務 No.3433 2019.11.18号 メモ

経営財務 No.3433 2019.11.18号 メモ

 

【目次】

・会計審 監査報告書に「その他の記載内容」に係る記載を新設か

JICPA 2018年度の監査実施状況調査を公表

・経営法友会有志 不祥事予防に向けた取り組み事例集を公表

・海外会計トピックス トーマス・クック破綻

・FASBコメント募集 「のれん等の会計処理」

 

【会計審 監査報告書に「その他の記載内容」に係る記載を新設か】

 現行実務において監査人は、「その他の記載内容」を通読し、財務諸表の表示と重要な相違がある場合は、監査報告書に追記情報としてその内容を記載している。今回の議論の内容は、国際監査基準改定に対応して、監基法720の改正の方向性を示すもの。改正案として、監査人は監査人が監査の過程で得た知識等と「その他の記載内容」との間に重要な相違があるかを検討することや、監査報告書の独立した区分として「その他の記載内容」に係る記載を新設するということが挙げられた。なお、この場合においても「その他の記載内容」について監査意見や保証の結論を表明するものではない。適用時期は2022年3月期からで調整。

 

背景

 国際監査基準(ISA)720では、監査人が監査の過程で得た知識と「その他の記載内容」に重要な相違があるかを検討し、監査報告書に独立区分を設けて検討結果を記載する改定が行われ、2016年12月15日以降終了事業年度から適用されている。また、日本の開示制度に関して、2020年3月期から財務諸表以外の開示の充実化が進められている。

 

今後の改正の方向性

①「その他の記載内容」の定義、監査報告書に記載を求める対象範囲

     有価証券報告書及び有価証券届出書(金商法開示)、事業報告(会社法開示)

②「その他の記載内容」に対する監査人の手続

 「その他の記載内容」の通読、「監査人が監査の過程で得た知識」との間に重要な相違があるか否かについて検討。

 なお、「監査の過程で得た知識」には「その他の記載内容」の通読・検討にあたって新たな監査証拠の入手は求められない。ただし、財務諸表の表示や監査人が監査の過程で 得た知識に関連しない内容についても、重要な誤りの兆候については注意を払う。

 「その他の記載事項」に重要な相違や誤りがあることに気づいた場合は、経営者及び監査役等と協議を行うなど、追加手続を実施する場合がある。経営者が「その他の記載内容」の重要な誤りの修正に同意しない場合は、監査報告書にその旨及び内容を記載するなどの対応が考えられる。

③監査報告書における「その他の記載内容」に係る記載の位置づけ

 現行実務と同様、監査意見とは明確に区別された情報の提供であり、意見を表明するものではないと整理。

④監査報告書における「その他の記載内容」に係る記載

 監査意見とは別の区分を設け、(1)「その他の記載内容」の対象、(2)「その他の記載内容」に対する監査人の責任、(3)「その他の記載内容」に対する監査人の手続、(4)「その他の記載内容」について監査人が報告すべき事項の有無、報告すべき事項がある場合はその内容を記載する。なお、監査人が監査意見を表明しない場合については、「その他の記載内容」についても記載しない。

⑤経営者・監査役等の対応

    監査人の協議に応じる。

⑥適用時期

 2022年3月期から。(KAM導入後)

 

*監基法720「その他の記載内容」

監査した財務諸表及び監査報告書が含まれる開示書類のうち、財務諸表及び監査報告書以外の法令等又は慣行に基づき作成された情報。

 

⇒新たな手続を要求するというよりは、「やるべき手続をより明確化する+監査報告書への記載として反映させる。」という流れだと感じます。前回の限定付き適正意見に係る記載理理由の明確化やKAM導入など、監査報告書の記載内容がどんどん変わっていきそうですね。

 

 

JICPA 2018年度の監査実施状況報告書を公表 平均監査時間・報酬いずれも増加】

 JICPAが2018年度の監査実施状況調査を公表。金商法監査対象3,287社について、平均監査時間は4,259.6時間、平均監査報酬は50,871千円であった。監査時間・報酬ともに前年度(4156.3時間、49,259千円)から増加。

 売上高500億円以上の企業においては、1社あたりの平均人数はやや減少。(▽4%程度)。

 

⇒平均監査時間は増加、一方で平均人数は減少、ということは一、部の人に負担が偏っていたり、アシスタントの関与が増加していたりすることを表しているんですかね。

 余談ですが、監査概要書とか監査実施報告書の人数集計って、ここは含めるとか含めないとかアシスタントをどう取り扱うかっていうルールが細かくてJ1の時非常に面倒だった記憶が蘇ります。。

 

 

【不祥事予防の具体的な取組事例を公表 経営法友会有志 不正発見の工夫などに触れる】

 日本取引所自主規制法人が2018年3月に公表した「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」に関連する具体的な取組内容等を取りまとめたもの。

 例えば、プリンシプルにおいて強調されていた経営トップによるリーダーシップの発揮に関しては、事例集において「社内報などにおけるトップメッセージの積極的な発信などにより、トップが自ら責任を持って取り組んでいる姿勢を示している」といった事例が紹介された。また海外子会社・買収子会社管理についてもトピックとなっており、被買収企業となる企業が買収企業の企業理念に付いてこられるかを検討する、権限規定の統一、お金の管理は駐在員で行うといった意見が紹介されている。

 

⇒記事やプリンシプルでも言及されていますが、コンプライアンスに関して活動の形骸化や現場の「コンプライアンス疲れ」を招くことを避けるということとの天秤が難しいですね。

 

 

【海外会計トピックス トーマス・クック破綻と調査結果等】

 トーマス・クック(TC)社が破綻し、会計・監査に対する疑惑が浮上。これを受けて、英国議会がBEIS(ビジネス・エネルギー・産業戦略省)の下で調査を実施した結果が公表。会計・監査に関連するトピックスは以下の通り。

・外部監査の環境

 2019年4月に「監査の将来」という報告書が提出されており、その中で挙げられた問題のうち特に監査の競争問題が非常に重大で、監査の質と有効性に影響すると指摘されている。

・のれん

 TC社の楽観的な見通しに基づきのれんの減損等が行われていなかった。2018年9月期においてのれんはBS資産の40%程度を占めていた。勧告事項として、のれんの計上および減損に対する手続の強化、監査意見への反映が挙げられた。

潜在的利益相反

 監査業務と非監査業務との同時提供が問題視された。TC社のケースでは、PwCが外部監査人であった時に採用及び報酬に関する指導業務も行っていた。

 

⇒イギリスの監査環境に関する厳しいニュースが続いている印象ですね。

 

 

【FASB コメント募集 のれん等の会計処理について】

 FASBが「識別可能な無形資産およびのれんの事後の会計処理」についてコメント募集を行った。コメント募集の背景には、近年、のれん及び無形資産の減損の情報の便益が、当該情報の作成及び監査のコストを正当化するかについて関係者から懸念が聞かれることがあるとしている。日本からはASBJとJICPAがコメントを提出。

 コメントを提出した作成者の75%が償却および減損モデルの導入に賛成。記事によると、作成者の属している業界は幅広い。

 監査人は70%以上が償却に賛成。反対は0件。賛成以外は保留または不明。

 財務情報利用者は50%以上が反対。賛成は3~40%程度なので反対が上回っている。

 

⇒個人的にはUS GAAPIFRSも償却するようになってほしいです。。。